『 Brazilian Like 』 Serge Delaite Trio 0:39:54

0:39:54 Usen C50 2005年05月16日2枚目 『 Brazilian Like 』
1 Brazilian Like(03分50秒)
2 Funji Mama(04分22秒)
3 Skating In Central Park(04分00秒)
4 Secret Love(05分30秒)
5 A Nice Guy(03分25秒)
6 There Is No Greater Love(02分38秒)
7 Just In Time(03分43秒)
8 For Heaven's Sake(06分21秒)
9 Prelude To A Kiss(06分05秒)
http://www.hmv.co.jp/product/detail.asp?sku=1501326
HMV レビュー
 
セルジュ・デラートの「澤野工房」第2弾。ベースはミシェル・ゴードリーに換わっている。前作がもともとが自主制作盤だったが、今回は澤野工房の肝いりで録音されており、選曲、サウンド、そして、デラート自身の気合の入り方の3拍子が揃ったアルバムに仕上がっている。
Serge Delaite (p) Michel Gaudry (b) Jean-Marc Lajudie (dr);Rec,2003-11-26,27,at factory studios in clearmont-ferrand

冒頭の今は亡き名ピアニスト、ミシェル・ペトルチアーニ作の“Brazilian Like”が始まると、空間は一変する。「ジャズロマンス」な空気が流れ出る。セルジュ・デラート、前作「Lookin' Up」がロングセラーを続け、日本でほとんど無名のこのピアニストはピアノ・ファンの心を捉えた。

今回は「Atelie SAWANO」の肝いりで録音され、随所にピアノ・ファン心をくすぐる仕掛けが施されている。「ジャズ・ピアノ大学入試問題」である。本作に収録されたナンバーを演奏したジャズの代表的なアルバムを答えよ、である。もちろん、2つ以上の答えはOK!ひとつも思い浮かばない人はまだまだジャズファンとしては小学校入学前。

そして、デラートが凄いのは、そうした名作を演奏しながらも、完全に自分の曲にしてしまっているところだ。ラテンボッサ系のアプローチを含めて、ジャズロマンスは止まらない。ここからはウォ−キング・ベースならぬ、“ウォ−キング・レビュー”。Bのワルツ・リズムを聞くと冬のセントラル・パークのスケート場の風景が浮かんでくる。映画「ある愛の歌」を思い出してください!これあり?!やられます。「冬ソナ」もいいけど「スケセン」でしょ。

キラーチューン連発の“もったいないアルバム”。Cもジャズの数多い作品中、最もロマンティックでメロディアスな作品。セルジュはここでは中音域のピアノの音を限りなく美しく並べて、この作品の持つ美しすぎるメロディに繋がる最高のソロを聞かせる。

オリジナルも凄い。Dはセルジュ入魂のバラード。Beautiful!!誰だNice Guyは?Eは多くの「答え」が輩出する超名曲。デラートはそれを知ってか知らずか、さらっと2:30でまとめている。頭いいよこの人は!バーリンのFは、ややスローなテンポで始まる。その答えはソロが始まると分かる。ファンキー・フィーリングではじめておいて、途中から転換する。

ゴーリーの深く心に沁みるベースで始まるGも名演がたくさんの曲。ベース・ソロといった貸したピアノのソロが始まり、「物語」は再び語りに戻る、そんな構成の作品。ここでもデラートのピアノは冴え渡る。これ以上ないところまでロマンスを盛り上げるデラートの妙技が光る。

最後の2曲は難関だ。答えが多すぎるのと、Hはデュークという大物がでんと構えている。それでもリズム解釈のセンスのよさで見事にユニークネスを獲得している。このドラム、考え付きませんね。最後はうーん、100枚くらい答えが浮かんできますね。ベース・ソロから入ります。続いて、ワルツ、ベースが続きます。初めてだ、こんなアレンジ。まだまだ、ベース、ずーっとベース。静かにエンディング。まさか?

随所にピリッと効いたスパイスは内緒です。「Atelier SAWANO」の隠し味。聴けば聴くほど楽しさ100倍です。入門者にも超ベテランにも楽しめる味わい深いピアノ・トリオ!推薦盤。答えを見つけてください!